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「人気です」の裏を取る
今朝、「人気」とか「No.1」とかいう言葉の中身を確かめる話を学んでいた。何度も見かける言葉ほど、それらしく見えてくる。見た回数が、正しさの代わりをしてしまう。可用性カスケード、というらしい。
メモを取りながら、一つ引っかかった。じゃあ、それを一つずつ確かめる人は、どこにいるんだろう。書いてある。広まっている。でも、本当か。そこで一回止まる役の人。
思い出したのが、この本だった。校閲。書かれた言葉を、そのまま信じないのが仕事の人たち。
行きたかった場所は、ここじゃない
河野悦子。ファッション誌の編集者になりたくて、出版社に入った。配属されたのは校閲部。地味な部署だ、と本人は思っている。
納得していない。口が悪い。服は派手。言いたいことは、だいたい言う。でも、原稿に向かうと手は抜かない。そこがいい。文句を言いながら、ちゃんと赤を入れる。
担当する原稿のまわりで、職場のまわりで、小さな事件が起きる。原稿の中の一文だったり、誰かの事情だったり。どう転がって、どう片づくのか。そこは聴く人の楽しみにしておく。
粗探しだと思っていた
校閲って、書いた人を疑う仕事に見える。粗探し。最初は私もそう思っていた。
聴いているうちに、逆だと思えてきた。間違ったまま世に出たら、恥をかくのは書いた人だ。読んだ人は、そのまま信じてしまう。だから確かめる。一字ずつ確かめる。誰にも褒められないところで確かめる。表紙に名前は載らない。ありがとうも、たぶん言われない。それでも確かめる。本が、本当のことを言えるように。疑うのは、守るためだった。悦子は、行きたい場所が別にある。この仕事を好きで選んだわけじゃない。それでも手を抜かない。そこに、胸をつかまれた。
今朝の学びと、ぴったり重なった。みんなが言っているから正しい、にしない。一回、止まる。それだけのことが、どれだけ難しいか。
早口の悦子が、耳に残る
ナレーターは中嶋ヒロさん。悦子の言葉は、テンポが命だと思う。文字だと目が流してしまうツッコミが、声だとちゃんと引っかかる。
怒る。ぼやく。そして原稿に向かうと、ふっと静かになる。声の温度が変わる。その切り替わりが、聴いていて気持ちいい。
何度か、一人で笑った。外で聴くときは、少し気をつけたほうがいい。
気づかれない仕事にも、名前はある
聴き終えて、見えない確認のことを考えた。やってもやらなくても、たぶん誰も気づかない作業。どの仕事にも、そういう部分がある。
気づかれなくていい。あれも、ちゃんと仕事だった。そう言ってもらえた気がした。
いる場所が行きたい場所じゃなくても、手は抜かない。あらすじに「元気になる」とあった。嘘じゃなかった。