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安心して言える、とは何か
今日、心理的安全性について調べていた。
ざっくり言えば、「こんなこと言ったら怒られるかな」と身構えずに、意見や失敗を口に出せる状態。チームがうまくいくかどうかは、メンバーの能力より先に、そこで決まる。そういう話だった。
読みながら、ずっと同じことが頭に浮かんでいた。じゃあ、その安心は、誰がつくるのか。メンバー全員で、と言えば聞こえはいい。でも現実には、いちばん大きく空気を左右するのは、上司だ。そこで思い出した。『もしアドラーが上司だったら』。蔵書に入れたまま、ちゃんと向き合えていなかった一冊。
アドラー式の上司は、何をするのか
著者は小倉広。アドラー心理学を、職場の上司と部下の関係に置き換えて教えてくれる本。あらすじの言葉を借りれば、対人関係の悩みを解決して、仕事で結果を出す方法を、アドラーが教える。
ここで出てくる考え方は、アドラー心理学の中心にあるものが多い。たとえば「課題の分離」。これは誰の課題なのか、を切り分ける。それから「勇気づけ」。叱って動かすのでも、褒めて動かすのでもなく、相手が自分で動く力に火をつける。上と下の縦の関係ではなく、横の関係で向き合う。
どう物語が進むのか、細かいところは言わない。聴く人の楽しみにしておく。ただ、理屈を並べるだけの本ではない。「こういう場面で、こう声をかける」が具体的に出てくる。だから耳に入ってきたとき、自分の職場の顔がいくつも浮かぶ。
この本の芯は「怒らない」ではなかった
聴く前は、「怒らない上司になれ」という本だと思っていた。違った。
怒る、褒める。どちらも、上から相手を動かそうとする点では同じ。そこから降りよう、という話だった。
ここが、今日学んだ心理的安全性とつながった。安心して意見が言える場所は、優しい言葉があふれる場所のことじゃない。相手を支配しようとしない人が、そこにいる場所だ。
そして、この本は部下の側にも刺さる。自分の課題と、他人の課題を分ける。上司の機嫌は、上司の課題。そう思えた瞬間、肩の力がすっと抜けた。
全部を割り切れるわけじゃない。でも、「それは私が背負うものじゃない」と一度言葉にできる。それだけで、擦り減り方が変わる気がした。
声で聴くと、説教にならない
ナレーターは多田啓太。
この手の本を紙で読むと、正論が正論のまま刺さってくることがある。「そうすべきだ」と言われている気がして、読み手が身構える。
声だと、ちがう。落ち着いた語りで、間を置きながら進む。説教されている感じがしない。隣で、同僚が静かに教えてくれているような距離になる。
耳で聴いていると、考えが途中で止まってもいい。いったん聴き流して、次の章で引っかかった部分に戻ればいい。手を動かしながら、歩きながら。ビジネス書は、声で聴くほうが続く。そう思った。
聴き終えて、明日の自分に残ったもの
上司を変えることはできない。それは、よくわかっている。
でも、自分の声のかけ方なら変えられる。後輩への一言、同僚への返事。相手を動かそうとする言葉から、相手の力を信じる言葉へ。ほんの少しだけ。
心理的安全性という言葉は、今日知ったばかり。アドラーは、もっとずっと前から同じ場所を指していた。そんな気がしている。
仕事で擦り減っている人に、聴いてほしい。難しい勉強をする気分じゃなくても、大丈夫。耳を貸すだけでいい。明日、誰かに話しかけるときの一言が、きっと少しやわらかくなる。