能面検事

MIMIBUNKO

「能面検事」オーディブル版 ― 表情のない人を、こちらが勝手に読んでいた

2026.10.12

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顔色から、勝手に読んでいた

今朝、認知の歪みについて調べていた。人は、相手の心を確かめもしないまま「きっとこう思っている」と決めてしまう。そういう癖があるらしい。

読みながら、思い当たることがあった。黙っている人。表情が動かない人。そういう相手の顔を見て、私は勝手に何かを読み取っている。怒っているのかな。呆れているのかな。確かめたことは、あまりない。

そういえば、と思い出したのが「能面検事」だった。表情を変えないことで〈能面〉と呼ばれる検事の話だ。

不破俊太郎という人

大阪地検一級検事、不破俊太郎。どんな圧力にも屈しない。微塵も表情を変えない。だから、陰で〈能面〉と呼ばれている。

そこに配属されてくるのが、新米事務官の総領美晴。彼女の目を通して、不破という人が少しずつ見えてくる。西成のストーカー殺人事件を調べていく中で。

事件の細部はここには書かない。どう繋がっていくかは、聴く人の楽しみにしておく。

ただ、ひとつだけ。総領が不破の顔を見て、あれこれ読もうとする。その気持ちが、痛いほどわかった。

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顔がないなら、何を見ればいいのか

能面みたいな顔の人を前にして、私たちは何を手がかりにするのか。

顔は読めない。なら、残るのは言葉と、やったことだけだ。不破は表情を変えない。でも、圧力に屈しない。それは態度として、はっきり残る。

この本の芯は、そこにあると思う。顔色をうかがうのをやめたとき、人はようやくその人自身を見られる。

職場で、顔色ばかり気にして擦り減っている時がある。そんな時こそ、この不破という人の在り方は、妙に静かに効いてくる。

声で聴くと、表情がないことが際立つ

ナレーターは夏谷美希さん。

紙で読む時は、「表情を変えない」という文字を目で追う。耳で聴くと、少し違う。声の抑揚が、ほとんど動かない場面がある。そこに、かえって緊張が生まれる。

間がある。その間に、聴いているこちらが勝手に意味を埋めようとする。ああ、これだ。今朝学んだ、あの癖だ。

声が静かなほど、こちらの心がうるさく動く。それを自覚させられるのは、耳で聴く体験ならではだと思った。

聴き終えて、残ったもの

聴き終えて、しばらく誰かの顔を思い浮かべていた。表情の読めない、あの人。確かめもしないで、私が決めつけていたあの人。

決めつけをやめる、なんて大げさなことはできない。でも、顔じゃなくて、言葉と行いを見てみよう。そのくらいなら、明日からできそうだ。

ミステリーとして楽しめる本だ。そのうえで、人の見方を少しだけ変えてくれる。通勤の途中でも、夜の家事の合間でも、聴いてみてほしい。


ここまで読んでくれた、あなたへ。
その物語の、入り口です。

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