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今朝、写真の「上手さ」を分解していた
今朝、旅館の写真について学んでいた。光は横から入れる。窓の光だと、料理にも空間にも温度が出る。余白は、主役を画面の3〜4割くらいに抑えると、それだけで高級に見える。色温度はページの中で揃える。暖色と寒色が混ざると、とたんに素人っぽくなる。
へえ、と思った。きれいに見える写真には、ぜんぶ理由があった。気分でも、生まれ持った目でもなくて、理由。ひとつずつ言葉にできる。なんだ、と思った。私がずっと「センスのいい人」だと思って遠ざけていたものは、もしかして、知っているか知らないか、それだけだったのか。
そういえば、と思い出した本がある。タイトルがそのまま答えになっている。『センスは知識からはじまる』。今夜は、これだ。
くまモンの人が、はっきり言い切る
著者は水野学さん。くまモンのアートディレクションをした人、と言えば伝わるだろうか。日本でいちばんセンスがあると言われそうな人が、本のはじめのほうで、あっさり言う。センスは、生まれつきの才能ではない、と。
じゃあ何なのか。知識の集積だ、と言う。普通を知る。いいものを知る。悪いものも知る。その引き出しが増えるほど、目の前のものを「ちょうどいい場所」に置けるようになる。それがセンスの正体だと。数字にできないものを、いちばんよく整える力。たしかに、と思った。今朝の私の写真の話と、まったく同じことを言っている。
聴いていて、責められている感じがしないのがよかった。お前にはセンスがない、という本ではない。センスは後から積める、という本だった。だから、安心して前に進める。
「自分にはセンスがない」と一度でも思ったことがあるなら、最初の数十分で肩の力が抜けます。
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「自分には向いてない」をほどいてくれる
「自分にはセンスがないから」。仕事でも、暮らしでも、何度この言葉で逃げてきただろう。服も、部屋も、企画も。向いてないから、で線を引いて、その先を見ないようにしていた。
この本は、その線をそっとほどく。向いてないんじゃない。ただ、まだ知らないだけ。知れば、変わる。だから怖くない。才能の話だと、持ってる人と持ってない人で世界が分かれてしまうけれど、知識の話なら、今日からでも足せる。一冊、一枚、一回の観察から。
読みながら、肩のあたりがゆるんだ。ずっと、才能のせいにして自分をあきらめてきたんだな、と気づいた。あきらめなくて、よかったのかもしれない。
声で聴くと、急がなくなる
ナレーターは下妻由幸さん。落ち着いた、淡々とした読み。これがこの本に合っていた。説教でもなく、煽りでもなく、ただ筋道を順番に置いていく声。
文字で読むと、私はつい結論だけ拾って先へ急いでしまう。でも声だと、急げない。一文ずつ、相手のペースで入ってくる。だから「知識を集める」という地味なメッセージが、ちゃんと体に残った。早く上手くなりたい、という焦りが、聴いているうちに少し静かになる。
手を動かしながら聴けるのもよかった。皿を洗いながら、夜道を歩きながら。生活のすきまに、ひとつずつ引き出しが増えていく感じがする。それが、この本の言う「積む」に、たぶんいちばん近い。
聴き終えて、明日の見え方が少し変わる
聴き終えて、残ったのはひとつ。センスは、努力でいい、ということ。これは、できない自分への赦しでもあるし、これからの自分への許可でもある。
翌朝、いつもの景色が少し違って見えた。あの看板はなぜ読みやすいんだろう。この店はなぜ落ち着くんだろう。理由を探す目が、ちょっとだけ開いた。今朝の写真の話とつながって、世界が「理由でできているもの」に見え始める。
才能がないと思って立ち止まっている夜に、これは効く。あなたに足りないのは才能じゃなくて、たぶん、あと少しの知識だけ。それは、今夜から積める。