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- 作品:『地雷グリコ』 著者:青崎有吾(KADOKAWA)
- 朗読:乃依実咲
- 再生時間:11時間23分(Audible版の配信開始は2024年12月27日)
- ドラマ化:Prime Videoで2026年11月13日から世界独占配信(森七菜・蒔田彩珠のW主演/Amazon公式発表)
11月13日からPrime Videoでドラマが始まる。映像で出会う前に、原作を耳で先に聴いておきたい人にも、ドラマで知って原作が気になった人にも、僕は先に原作を勧めたい。この本は、朗読の乃依実咲さんの声で11時間23分ある。
地雷グリコのような謎解き・読み合いの物語を、ほかにも、オーディブルの作品を紹介しています。オーディブルのおすすめミステリー小説37選に、ジャンル別にまとめました。小説全体の入口はオーディブルのおすすめ小説にあります。
「不安」を、もう少し細かく
今朝、感情粒度という言葉を学んでいた。感情に、細かく名前をつける力のことらしい。語彙が増えると、「不安」を「不安と興奮が混ざってる」と読み分けられるようになる。すると景色が変わる。苦手だから不安なんじゃない。挑んでいるから、緊張している。そう言い換えられる。
たかが言い換え。でも、たぶん、これは効く。怖いと思った瞬間に「いや、これは挑んでる証拠だ」と置き直せたら、足が止まらずに済む。
そこで、ふと思い出した本がある。「地雷グリコ」。あの本の主人公は、この読み分けが、たぶん異様にうまい。だから今日は、この本のことを話したくなった。
簡単なルールの下に、罠が敷いてある
射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。平穏に過ごしたいだけなのに、なぜか風変わりなゲームに巻き込まれていく。
やることは、子どもの遊びに似ている。階段を一段ずつ上る「地雷グリコ」。百人一首の絵札を使った神経衰弱。ルール自体は、聞けば数十秒でわかる。でも、その盤面の下には、見えない罠が敷いてある。どこに地雷があるか。相手は今、何を狙っているか。読み合いだけで、勝敗がひっくり返る。
真兎は、相手の指先のためらいとか、声の半拍の遅れとか、そういう小さなものを拾っていく。何が真相で、どこで形勢が動くのかは、聴く人の楽しみに取っておく。
盤面の下に敷かれた罠を、耳で踏まないように歩く。この緊張、ぜひ味わってほしい。
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読み合いは、感情に名前をつける作業だった
この物語の読み合いは、結局、相手の感情に細かく名前をつける作業だと言える。今朝学んだことと、まっすぐ重なった。「迷っている」じゃなく「迷っているふりで、本当は決めている」。そこまで分解できる人が、勝つ。
そしてもう一つ。真兎は、焦らない。劣勢でも、怖がっているように見えない。たぶん本人の中では、怯えではなく「考えている」に置き換わっている。挑んでいるから、集中している。それだけ。
ここが、この作品の勇気をくれるところだと思う。盤外の自分にも効く。明日の打ち合わせ、苦手な電話、初めての作業。ざわっとした時、それを「苦手だから」で終わらせない。「挑んでるから緊張してる」と読み替える。たったそれだけで、一歩が出る。出る。出るんだ。
声で聴くと、沈黙が武器になる
この本は、声で聴くと「間」が効く。読み合いの物語だから、当然なのかもしれない。
読み合いの物語を朗読で聴く形式では、一手を読み上げたあとの間が、文字では飛ばしてしまいがちな空白として残る。耳は飛ばせないので、相手が次に何を出すかを、聴き手も待つことになる。
声の調子で場面の緊張を伝えられるのも、音声ならではの特徴だ。目で追う読書とは、勝負への入り方が少し違う。
この本が向いている夜
難しい話じゃない。ルールは簡単。でも、その下を読む目の気持ちよさが、この作品の魅力だと思う。
そして、今朝の学びとも、ちゃんと重なる。怯みそうになったら、その感じに名前をつけてみる。不安なのか、興奮なのか、その両方なのか。真兎が盤面を読むみたいに、自分の中を、少し細かく読んでみる。
明日ちょっとだけ頑張りたい夜に、いい。擦り減った頭が、冴えた読み合いで少し冷えて、また動き出す。眠れないなら、なおさら止まらないと思う。耳を澄ませて、一緒に一段ずつ、階段を上ってみてほしい。