五つの季節に探偵は

MIMIBUNKO

「五つの季節に探偵は」オーディブル版 ― 実際より良く見せる世界で、暴くことをやめられない人

2026.10.20

※本ページはアフィリエイト広告(PR)を含みます。

実際より良く見せてはいけない、という決まり

今朝、景品表示法の有利誤認表示を学んでいた。商品やサービスの内容、取引の条件を、実際よりも著しく良く見せる表示。それは規制の対象になる。

読みながら、ふっと変なところに考えが行った。商品には、法律が「実際より良く見せるな」と言ってくれる。じゃあ人間は。誰も止めない。みんな少しずつ、よく見せて暮らしている。私もたぶん、そう。

そこで、この本を思い出した。逸木裕「五つの季節に探偵は」。人の本性を暴かずにはいられない私立探偵の話。

みどりという探偵

主人公は、私立探偵のみどり。紹介文にはこうある。「人の本性を暴かずにはいられない」。

仕事だから暴く、ではない。暴かずにはいられない。この言い方が、ずっと耳に残っている。才能というより、性分。やめたくてもやめられないもの、に聞こえた。

形は連作短編集。みどりはいくつもの事件と対峙していく。第75回日本推理作家協会賞の短編部門を受賞した作品で、紹介には「精緻でビターなミステリ」とある。どんな事件で、どこへ着地するのか。それは聴く人の楽しみにとっておく。

本性を暴く物語を、声で一話ずつ。まずは無料体験で耳を預けてみる。
最初の30日は無料で試せます。

▶ 30日間無料で聴いてみる

Audible無料体験/30日以内に退会すれば費用は一切かかりません。

暴く側にも、暴かれる側にも

聴きながら、何度か自分の側に話が戻ってきた。

本性を知りたい、という気持ち。正直、ある。あの人は本当はどうなんだろう、と。でも同じだけ、自分の本性は見られたくない。見せ方を整えて、少し良く見せている。朝に学んだ有利誤認の話と、変なところでつながってしまった。

この本は、暴くことを気持ちよく描いてはいない。ビター、という言葉の通りだと思う。知ってしまったあとに残るもの。知らないままのほうがよかったかもしれないもの。そこに、みどりの性分が重なる。

知りたい。でも、知ったら戻れない。この二つが同じ人の中にある。それがこの物語の、いちばん人間くさいところだと感じた。

耳で受け取る、一話ぶんの重さ

ナレーターは水谷麻鈴。一人の声で、全部を聴く。

ミステリは、種明かしの瞬間が耳に来ると違う。文字なら目が先に答えへ飛んでしまうところを、声は飛ばせない。一語ずつ、順番に、時間をかけて届く。その遅さが、緊張になる。

短編の連作だから、一話ごとに区切りがある。通勤の途中でも、夜の家事のあいだでも、一話で一息つける。区切りで止めて、少し考える。その余白がちょうどよかった。

聴き終えて残ったもの

すっきりした、とは言えない。それが正直なところ。ビターな味が、ちゃんと舌に残っている。

でも、悪い残り方じゃない。人を見る目が、ほんの少しだけ変わる。それと、自分の見せ方についても。実際より良く見せていないか。見せないでいられる場所が、どこかにあるか。

法律は商品の表示を見張ってくれる。人間のほうは、自分で見張るしかない。そんなことを考えさせてくれる一冊だった。ひとりで、静かに聴くのに向いている。


ここまで読んでくれた、あなたへ。
その物語の、入り口です。

▶ まず30日、無料で聴いてみる

Audible無料体験/30日以内に退会すれば、費用は一切かかりません。




声に出会えた本は、ほかにもあります。

私の本棚を見る →

← 耳文庫トップへ