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知念実希人の「優しい死神の飼い方」
この一冊は、知念実希人の作品だ。タイトルは「優しい死神の飼い方」。死神を飼う、というのがどういうことなのか、題名だけでは見当もつかない。
犬になった死神が、ホスピスにいる
物語の入り口はこうだ。亡くなった人の魂を導く、案内役の死神がいる。その死神が、なぜか犬の姿にされてしまう。雪山で凍えて死にかけていたところを、ホスピス「丘の上病院」の看護師・朝比奈菜穂に拾われ、「レオ」と名付けられる。
レオは、病院で最期の時を過ごす患者たちの“心残り”を、一人ひとりほどいていく。連作のミステリーだ。犬になった死神、という設定だけを見れば、気を抜いて楽しめる話に見える。
心残りが一つ重なるたび、物語が深くなった
ところが、この物語は、その油断が効かなくなっていく構成だと思う。
一つ一つの心残りが、ストーリーが進むにつれて、物語に入り込んでいく連作だ。エピソードが積み重なるほど、深みを増していく。最初は独立した謎解きに見えるものが、一本の、大きな物語の流れになっていく。
悲しさと感動が入り混じる物語
ホスピスを舞台にした連作なので、悲しさと、苦しさと、感動の入り混じった読後感を求める人に向いている。
声だから、場面を“もう一度”再生できる
紙の本でも、もちろん泣ける。ページをめくる手が止まって、文字がにじむことはある。でも、同じ一行を目で読み返しても、最初に泣いたときの感情まで、そっくり戻ってくるわけではない。一度読んでしまった文字は、どこか答え合わせみたいになる。
音声なら、同じ場面を巻き戻せば、ナレーターの読みごと、もう一度頭から再生できる。気に入った場面を、もう一度味わうために聴き直す。それは、聴く読書ならではの使い方だと思う。
菜穂自身の最期へ
物語の最後は書かないでおくが、一つだけ。心残りをほどき続けたこの物語は、菜穂自身の最期へと向かっていく。切なさが残る物語だ。
聞く読書という選び方
「優しい死神の飼い方」は、聴く読書の、場面を何度でも再生できる良さが活きる一冊だと思う。
もし、最近ちゃんと泣いていないな、という人がいたら。一度、声で聴いてみてほしい。気に入った場面を、何度でも巻き戻せる。そんな贅沢な聴き方が、待っているかもしれない。
声が風景を立ち上げてくれた話はこちらの一冊に、耳で物語と出会い直す話はこの一冊にまとめている。よければ、耳文庫の本棚も覗いてもらえたら嬉しい。