※本ページはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
最初に聞いた数字が、あとの判断を引っぱる
今朝、アンカリング効果について学んでいた。最初に目にした数字や情報が基準点になって、そのあとの判断がそこに引き寄せられる、という話だ。
値札を最初に見た人は、あとで出てくる金額をその値札と比べてしまう。比べているつもりはない。気づかないうちに、錨が下りている。
読みながら、ふと思った。数字だけだろうか。言葉も同じじゃないか。若いころに出会った一言が、その後のものさしになる。そういうことはあると思う。
そこで、この本を思い出した。『20代で得た知見』。
預金額でも、恋愛でも、結婚でもない
著者はF。ナレーターは山田寛人。
あらすじの冒頭が、まず気になる。一人の人間の人生は、出会った言葉でも、預金額で決まるとも、恋愛だの結婚で決まるとも思えない。言い切りだ。
そのあとに続くのが、ある夜に友人が電話で語ってくれた台詞。恋人がふとした瞬間に吐き捨てた台詞。そういう、誰かの口から出た言葉たちが並ぶ。
どんな言葉が出てくるのかは、ここには書かない。聴く人の楽しみにとっておく。ただ、全部が立派な格言ではないところがいい。吐き捨てた台詞、とあるくらいだ。きれいに整えられていない。
言葉に、決められたくない。でも、残る
この本の芯は、たぶんここにある。人生は言葉で決まらない、と言いながら、本全体は言葉でできている。矛盾しているように見える。
でも、私はそれを嘘だとは思わなかった。言葉に決められたくない。けれど、出会ってしまった言葉は消えない。錨のように、どこかに残る。その両方を、同時に認めている感じがした。
今日学んだことと、重なった。錨が下りているなら、まず錨があると知ること。基準点がどこにあるかを知っていれば、引っぱられていても、引っぱられていると分かる。
仕事で擦り減った日にこそ、こういう本はいい。何かを教えられるというより、自分のものさしを一度、床に置いて眺められる。
声で聴くと、言葉が「口から出た」ものになる
オーディブルで聴いてよかったのは、この点だ。電話で語られた台詞、吐き捨てられた台詞。もともと声で発された言葉が、声で届く。
文字で読むと、どれも等しく整って見える。声になると、言葉の温度が出る。間が空く。語尾が落ちる。山田寛人さんの落ち着いた読みで聴くと、一文ずつが、誰かの隣で聞かされているみたいに入ってくる。
一人の時間に、イヤホンで聴くのに向いている。通勤でも、寝る前でもいい。一気に聴かなくていい。一つ聴いて、止めて、考える。それができる本だと思う。
聴き終えて残ったのは、答えではなかった。自分のなかにすでに下りている錨を、見にいく気持ち。それだけで、明日ちょっとだけ違う。