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実際より、よく見せる表示
今朝、景品表示法の「有利誤認表示」を学んでいた。
実際のものよりも、取引条件が有利だと思わせる表示のこと。価格や条件を、実際より得に見せる。見た人は、そう信じて選ぶ。だから規制される。
読みながら、ずっと同じことを考えていた。嘘をつく側は、たいてい見せ方がうまい。そして騙される側は、騙されたことに、すぐには気づけない。
そういえば、この本がそうだった。織守きょうやの「花束は毒」。あらすじの一行目からして、もう穏やかじゃない。罠、また罠。100%騙される、と書いてある。
一通の手紙
始まりは、手紙。「結婚をやめろ」。
それを受け取ったのが、元医学生の真壁。結婚を前にした人に、そんな手紙が届く。それだけで十分に気味が悪い。
しかも彼には、脅迫者を追及できない理由があるという。ここがもう、うまい。普通なら怒って犯人を捜す。それができない。何か抱えている。その何かを、私はまだ知らない状態で聴きはじめた。
どんな理由かは、ここには書かない。聴く人の楽しみだから。
助けたい人と、言えない人
真壁を助けたいのが、木瀬。探偵に調査を依頼する。
この図が、いい。困っている人と、助けたい人。どちらも悪意はない。むしろ善意の側にいる。それなのに、話が進むほど足もとが揺れる。
善意で動いている人ほど、見せられたものを信じる。信じたいから。ここで、朝に学んだ話がまた頭に浮かんだ。誤認させる表示は、疑り深い人より、ちゃんと信じる人に効く。
聴きながら、何度か手を止めた。いま信じた自分は、正しかったのか。そう思わされる。それがこの本の怖さで、面白さだと思う。
二人の声で聴く、ということ
ナレーターは二人。梅原裕一郎と、福沙奈恵。
声が変わる。それだけで、見ている場所が変わる。誰の目から世界を見ているのか、耳が先に知る。紙の上なら、読み流してしまう切り替わりの境目。声だと、どうしても引っかかる。
その引っかかりが、この本では効いてくる。ここは誰の話なのか。いま語っているのは、信じていい声なのか。
間が、こわい。台詞の前の、ほんの少しの沈黙。そこに何かが潜んでいる気がして、イヤホンの中で息を止めた。
手紙を読む声の温度も、聴きどころ。ここは、実際に耳で確かめてほしい。
聴き終えて残ったもの
聴き終えてまず思ったのは、やられた、ということ。悔しいのに、気持ちいい。
騙されるのは、ふつう嫌なことだ。景品表示法が必要になるくらい、嫌なことだ。でも物語の中で、安全な場所で、しっかり騙される。これはこれで、ひとつの贅沢だと思った。
そして、タイトル。花束は、毒。きれいなものが、きれいなだけとは限らない。聴き終えたあとで、この題名がまた違って聞こえた。どう繋がるかは、聴く人の楽しみ。
眠れない夜に、一人で聴くのに向いている。ただし、途中で止めるのは難しい。それだけは先に言っておく。