オリエント急行の殺人

MIMIBUNKO

「オリエント急行の殺人」オーディブル版 ―「史上最高」と言える根拠を、全員の証言の中に探す

2026.10.13

※本ページはアフィリエイト広告(PR)を含みます。

「最高」と書くなら、根拠を出せ

今日、最上級表現のルールを学んだ。「No.1」「最高」「業界最安」。広告でそう書くなら、根拠を示せなければいけない。何をもって一番と言うのか。いつの、どの調査か。それが言えないなら、書いてはいけない。

なるほど、と思った。同時に、ひとつ思い出した。「ミステリの女王」「史上最高傑作」。この本に付いている言葉だ。

根拠は、あるのか。そう考えながら、オリエント急行の殺人を聴いた。

雪の中で止まる、豪華列車

舞台は真冬のヨーロッパを走る豪華列車。乗客は国籍も身分もばらばらだ。偶然乗り合わせたのが、名探偵ポアロ。

ある夜、老富豪が刺殺体で見つかる。列車は雪で動けない。犯人は、この車内にいる。そして乗客たちには、どうやら完璧なアリバイがある。

筋は、それだけ。それだけなのに、聴く手が止まらない。

列車に乗り込む前に、まずは耳で試してみませんか。
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疑う、ということの手触り

ポアロは一人ずつ話を聞いていく。聴いている私も、いつのまにか一緒に聞き取りをしている。この人は嘘をついているのか。ただ、緊張しているだけか。

面白いのは、疑いが「根拠」を求めてくることだ。直感ではだめ。証言と証言をつき合わせて、ズレを探す。さっき学んだ、あの感覚に近い。言い切るには、裏づけが要る。

どう繋がるかは、聴く人の楽しみにとっておく。ここで書けるのは、ポアロが最後まで「なんとなく」では動かない、ということだけ。

声で聴くと、証言には「間」がある

紙で読むと、証言は文字の並びだ。耳で聴くと、そこに間が生まれる。答えるまでのわずかな沈黙。言葉を選ぶような、ゆっくりした言い方。

ナレーターの杉村理加さんは、乗客たちを声の調子で描き分けていく。大げさではない。ほんの少し、声の置き方が変わるだけ。それで、この人は落ち着いているな、この人は何か隠していそうだな、と耳が勝手に拾ってしまう。

拾ってしまうから、疑う。疑うから、また聴き返したくなる。耳で聴く推理小説は、聴き手を探偵席に座らせる。

聴き終えて、残ったもの

「史上最高」に根拠はあったか。私の答えは、ある、だ。ただし数字ではない。最後に全部が収まるとき、聴いている自分の中で、小さな音がした。それが根拠だと思う。

夜、ひとりで聴くのに向いている。部屋が静かなほど、列車の中の静けさが濃くなる。眠れない夜に再生するなら、少し覚悟してほしい。止めどきを失う。

古い名作は、評判だけが先に立つ。だからこそ、一度だけ疑いながら聴いてみてほしい。最上級の言葉が、本当にその名にふさわしいかどうかを。


ここまで読んでくれた、あなたへ。
その物語の、入り口です。

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