硝子の塔の殺人

MIMIBUNKO

「硝子の塔の殺人」オーディブル版 ―犯人を直感で決めたがる自分と、耳で付き合う

2026.10.23

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直感と、検算と

今朝、二重過程理論を学んでいた。人の思考には二つのモードがある、という話。ぱっと浮かぶ速い直感がシステム1。ゆっくり確かめる熟慮がシステム2。

読みながら、ミステリのことを考えた。

あれは、この二つのせめぎ合いだ。「こいつが怪しい」と、システム1が勝手に犯人を決める。そのあとでシステム2が出てきて、本当にそうか、と検算する。裏切られると気持ちいい。

そういえば、この本がそうだった。知念実希人「硝子の塔の殺人」。

雪の森に建つ、硝子の塔

舞台は雪深い森。そこに、硝子の塔が建っている。地上11階、地下1階。唯一無二の美しく巨大な尖塔、と紹介されている。

もう、この絵面だけでいい。雪の白。硝子の透明。閉じた場所。ミステリが始まらないほうがおかしい。

あらすじは、これ以上は書かない。誰がどう関わるのか、何が起きるのか。聴く人の楽しみにとっておく。

ただ、500ページ、一気読み。そう謳われているのは分かる。止まらなくなる側の本だと思う。

雪の森の硝子の塔へ、耳から入ってみませんか。
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疑う気持ちを、止められない

聴いている間、私のシステム1は大忙しだった。

この人、怪しい。いや、こっちか。根拠はない。声の調子とか、ちょっとした言い回しとか、そんなもの。直感だから、止められない。

そのあとで、システム2が働く。あの場面はおかしくなかったか。さっきの台詞と合うか。頭の中で、ひとつずつ戻って確かめる。

この往復が、楽しい。当たるかどうかは、あまり関係ない。自分の頭が、ちゃんと動いている感じがする。

どう繋がるのか。それは、聴いて確かめてほしい。

耳だと、戻れない

紙の本なら、気になったページに指を挟んで戻れる。耳だと、そうはいかない。声は流れていく。

だから、ナレーターの高梨謙吾さんの声に、ついていくしかない。引っかかった言葉は、頭の中に置いたまま、先へ進む。

これが意外と、ミステリに合っていた。置いておいた違和感が、あとで急に意味を持つ。戻れないから、覚えている。

夜、ひとりで聴くのもいい。暗い部屋で声だけがあると、雪の森の静けさが、こっちまで来る。

聴き終えて残るもの

聴き終わって、しばらく動けなかった。

犯人が分かったから、ではない。いや、それもあるけど。自分の直感が、どれだけ当てにならないか。そして、どれだけ楽しく外れるか。それを、体で味わった感じ。

速く決めたがる自分がいる。確かめたがる自分もいる。どちらも、いていい。

硝子の塔は、透明なのに、見えないものだらけだった。そこは書かない。

眠れない夜に、500ページ分の声を連れて。雪の森へ、行ってみてほしい。


ここまで読んでくれた、あなたへ。
その物語の、入り口です。

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