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見た目が、先に口をきく
今朝、ハロー効果を学んでいた。ひとつ目立つ特徴があると、それが全体の評価まで染めてしまう。顔がいい人は中身もいいように見える。肩書きが立派だと、話まで正しく聞こえる。
読みながら、ひとつ本を思い出した。「宝石商リチャード氏の謎鑑定」。美貌の外国人が主人公のひとりだ。ハロー効果の教科書みたいな人物。だから、この本は面白いのだと思った。
見た目に染められるのは、こちらの目。その目の持ち主は、自分でなかなか気づけない。
堅実な大学生と、美貌の宝石商
公務員志望の堅実な大学生、中田正義。酔っ払いに絡まれていた美貌の外国人を助ける。それがリチャードだった。国内外に顧客をもち、スーツケースで飛び回る敏腕宝石商。
出会いはそれだけ。派手な事件から始まるわけではない。物語は、宝石を前にした人の心を、ひとつずつ見ていく。宝石そのものより、持ち主の気持ちのほうが謎になる。
どんな謎がどう解かれるかは、聴く人の楽しみにとっておく。ここでは書かない。
石を見る目、人を見る目
宝石には、鑑定という作業がある。きらきらして見えるだけでは足りない。本物かどうか、見極める。
人も同じだと思う。綺麗に見えるものを、そのまま信じない。かといって疑ってばかりも疲れる。この本の中には、その間の歩き方がある気がした。
正義という名前の青年が、まっすぐなのがいい。堅実で、少し真面目すぎる。その目が、美しさの向こう側を見ようとする。そこに、ほっとした。
声で聴く、間のこと
ナレーターは閻子丹。声が、ふたりの距離を作る。文字で読めば同じ一行でも、声になると息の間合いが入る。
言いよどむところ。静かになるところ。耳は、そこで立ち止まる。ハロー効果で言えば、声もまた印象を染めるのだと思う。でも聴いているうちに、声の色が登場人物の心のほうへ、すっと沈んでいく。
ひとりで聴いていると、宝石店の静けさまで想像できてしまう。画面を見なくていい。手は洗い物をしていて、耳だけ別の部屋にいる。そういう時間だった。
聴き終えて、残るもの
聴き終えて、自分の目のことを考えた。何に染められているだろう。顔か、肩書きか、声の大きさか。
答えは出ない。出なくていい。ただ、次に誰かを見るとき、いったん一拍置く。それだけで少し変わる気がする。
美しいものを、美しいまま愛せる人でいたい。でも、その奥の心も見たい。そんな欲張りな願いを、そっと置いていく一冊だった。