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原因はどこにある、という話
今朝、帰属理論というものを学んでいた。相手の行動や失敗を見たとき、その原因を「その人の性格」のせいにするか、「そのときの状況」のせいにするか。人はそれを、無意識に選んでいる。
読んでいて、少し居心地が悪くなった。自分もやっている。遅刻した人を「だらしない人」と思い、自分が遅刻したときは「電車が遅れたから」と思う。この差は、知ってしまうと戻れない。
そこで、この本のことを思い出した。薬丸岳の「友罪」。聴いたのはしばらく前なのに、今朝の学びと、ぴたりと重なった。
町工場の、無口な同僚
主人公は益田純一。ジャーナリストを志して夢破れ、製作所に住み込みで働き始める。そこで出会う同僚が、鈴木秀人。無口で、陰気で、どことなく影がある。職場では好かれていない。
あらすじにある問いは、ひとつだけ。過去に重大犯罪を犯した人間が、会社の同僚だとわかったら?
どう動いていくのかは、ここには書かない。聴く人の楽しみにとっておく。ただ、この問いは物語が始まる前から、聴いている私の足元に置かれている。そんな感覚があった。
「知る前の相手」と「知った後の相手」。その間を、声で聴いてみませんか。
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「知った後」の目で見てしまう
この本の芯は、事件そのものではないと思う。知る前と、知った後で、同じ人の同じ仕草が違って見えてくること。そこだ。
黙っている。それだけのことが、「影がある」から「何かを隠している」に変わる。帰属が、性格のほうへ一気に傾く。聴いていて、自分の頭の中でも同じことが起きているのがわかった。登場人物を責める前に、自分の目を疑うことになる。
答えは出ない。出ないまま、ずっと考えさせられる。これは、気持ちよく読み終わる種類の本ではない。でも、だからこそ聴いてよかった。
二人の声で聴くということ
ナレーターは、品田美穂さんと前田弘喜さんの二人。声が替わることで、物語を見る立ち位置が変わる。耳で聴いているのに、視点が動くのがわかる。
とくに、台詞のあとの間。言いかけて、やめる。その沈黙が、文字で読むよりずっと長く感じられた。声が揺れる一瞬を聴くと、「この人は、いま何を飲み込んだのか」と、勝手に想像してしまう。想像した時点で、もう私も帰属をやっている。
作業をしながらでも聴ける。けれど、この本は手が止まる場面が来る。そのとき、ひとりで静かに聴いていてよかったと思った。
聴き終えて残ったもの
許せるか、許せないか。聴き終えても、そこに結論は持てなかった。持てなくていい、とも思った。
残ったのは、ひとつの癖だ。誰かの行動を見て「そういう人だ」と決めかけたとき、少し立ち止まる。状況のせいではないか。私が知らないだけではないか。立ち止まるだけで、何かが変わるわけじゃない。それでも、決めつけの速度は少し落ちた。
人を許したくなる夜にも、人生を少し引いて眺めたくなる夜にも、静かに効いてくる本だと思う。重い。けれど、聴いてよかった一冊。