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AIDAを覚えた日に、この題名を見た
今日、AIDAの法則を学んだ。セールスライティングの基本の型。Attention、Interest、Desire、Action。注意を引く。興味を持たせる。欲しいと思わせる。行動してもらう。順番に、四つ。
覚えたての型は、使いたくなる。目に入るものを全部、AIDAに当てはめたくなる。そんな頭で本棚を眺めていたら、一冊で止まった。『殺し屋の営業術』。
注意、引かれた。題名だけで。殺し屋と営業。いちばん遠いはずの二つが、同じ一行に並んでいる。これ、AIDAの一段目として満点じゃないか。しかも江戸川乱歩賞受賞作。二段目の興味も、もう置いてある。型を学んだ日に、型の見本みたいな題名に出会ってしまった。そういう日の選書は、たいてい当たる。
物騒な題名のわりに、入口は仕事の匂いがする
中身の話は、少しだけ。ネタバレは書かない。どう繋がるかは、聴く人の楽しみにしておく。
あらすじを読むかぎり、これは派手な殺しの話である前に、仕事の話だ。営業という、誰もが一度は嫌な顔をしたことのある言葉が、真ん中にある。数字。相手の懐に入る。断られる。そういう言葉が、殺し屋という設定の横に平気な顔で座っている。
江戸川乱歩賞の選考では、異例の超ハイレベルな最終候補の中で、ぶっちぎりの第1位だったと紹介されている。有栖川有栖さんは「乱歩賞作品の中でも異彩を放つ一作だろう」と評した。異彩。その一語が、聴く前から期待を上げる。
営業という仕事を、斜めから見る
この本の芯は、たぶんここだと思う。営業の技術は、人の心にどう近づくかの技術だ。AIDAも結局は、相手の目線をどこに置くかの設計図だった。
それを殺し屋という、いちばん極端な立場に持っていく。極端にすると、普段は見えない輪郭が出る。売る側の緊張。買う側の疑い。信用が一瞬で崩れる怖さ。毎日の仕事で、私たちが小さく味わっているものの拡大図。
仕事で擦り減っている夜に、これを聴く意味はそこにある。自分の仕事を、少し遠くから見られる。引いて眺めると、あの面倒な商談も、あの気まずい電話も、別の顔をして見える。笑うかもしれない。ぞくっとするかもしれない。どちらでも、肩の力は少し抜ける。
声で聴くと、間が仕事をする
ナレーターは外崎友亮さん。営業の本を、声で聴く。これが良い組み合わせだと思っている。営業は、言葉の中身と同じくらい、声と間で決まる仕事だからだ。
紙で読むと、台詞は文字のまま通り過ぎる。声で聴くと、一拍の沈黙が、そのまま緊張になる。言い切る声と、探る声の違いが、耳に直接入ってくる。営業の場面ほど、音声が活きる題材はそう多くない。
しかも通勤や家事の手が塞がった時間に聴ける。物騒な話を、洗い物をしながら聴く。この落差が、ちょっと楽しい。
聴き終えて、持ち帰りたいもの
型は、道具だ。AIDAも、使う人の目線次第で、人を動かしもするし、ただの飾りにもなる。今日学んだことを、この本を聴きながらもう一度考えたくなった。
売るとは何か。相手に届くとは何か。そんな問いが、殺し屋の話の向こうに、静かに残るのだと思う。結末は言わない。聴いた人だけが、自分の言葉で持ち帰ればいい。
明日、誰かに何かを伝える仕事がある人へ。一章だけでも、耳に入れてみてほしい。